英.ホームステイ2

以前に書いた、同じステイ先に住んでいたUAEのイブラヒム…、本当に何かネタを提供してくれる男だった。
ある休日、イブラヒムが「散歩に行こう」というので、僕は彼とBunburyの小さなションイングセンターに行った。
敬虔なイスラム教徒である彼の話は正直退屈で会話が苦痛になることもあった。
彼の話のほとんどが「宗教勧誘」である…。
散歩も仕方なく付き合ったというのが正直なところだ。

僕とイブラヒムが歩いていると、遠くから「JUN~、JUN~」と呼ぶ声が聞こえた。
声のする方を見てみるとAがホストファミリーたちと買い物をしていた。
Aのことも過去日記に書いたが、スッチー志望の強烈な個性の持ち主である。
僕はAのホストファミリーに挨拶し、イブラヒムを彼女たちに紹介した。

あれ?
普段、マシンガントークのイブラヒムが全然しゃべらない…。
彼の顔を見てみると何か緊張しているようだった。
Aやホストファミリーと軽く会話した後、僕たちはステイ先に向かって歩いた。
するとさっきまで黙っていたイブラヒムが口を開いた…。
「ここから50m先に木々が見えるだろう?僕の部屋から家の門までと同じくらいの距離だよ」
そう言って彼を遠くの木々を指差しながらさらに言葉を続けた。
「UAEにはいつでも遊びに来てくれよ。Aと一緒に…。」

何故Aと一緒に???
若かった僕が最初に思ったのは「コイツ、僕とAが付き合っていると勘違いしているな!」ということだった(笑)。
そこで僕はイブラヒムに言った。
僕:”She is not my girl friend.”
彼:”Of course I know.”
僕:”Why do I have to visit your house with her?”
彼:”Because I love her.”
僕:”What?”
彼:”I’m serious. She is so beautiful.”

イブラヒム…この野郎、今まで宗教の話ばかりだったのに、帰り道は好みの女の話ばかりしやがる…。
お存知のとおりイスラム法では一夫多妻制である。
イブラヒムの話によると、男は4人まで奥さんを持つことができるらしい。
男にとっては夢の話に聞こえるかもしれないが、よく考えると恐ろしいことである。
基本的に男女の数が同数だとすると、男1人で4人の女性と結婚してしまったら、
確率的に「結婚できない男性」の割合が高くなるのではないだろうか?
そうなると男たちの中で「勝ち犬」「負け犬」に二極化されていくのではないのか?
イスラム圏では、日本の「結婚できない男」以上に結婚できる可能性が低くなるような気がする…(汗)。
逆に金持ち男にとっては文字通りのハーレムなのか…。
ん…?まてよ、逆にイスラム圏で「結婚できない女性」って「超~負け犬」」こと?
まるでデフレスパイラルのように僕の頭の中は混乱していくのであった…。
「もっと他のことに頭を使え!」である。

翌日の朝、学校に行く支度をしていると、イブラヒムが僕に手紙を渡して言った。
“Please send it her.”
「この野郎、俺は愛の仲介人じゃないんだよ!」と思ったが、
テロリスト顔のイブラヒムに刺されるのが怖かったので、素直に“Sure.”
そしてイブラヒムに言われたとおりAに手紙を渡した。。。


UAE(アラブ首長国連邦)のイブラヒム、宗教上のことからホストファミリーと対立することが多かった。
ホストファミリーに早朝の祈りがうるさいと注意された後、
イブラヒムは「イスラム教徒は豚肉を食べないので食事は鶏肉だけにしろ」とか色々要求をするようになった。
「俺は金を払っているんだから、お客さんなんだよ!」という態度…。

僕は自分の夕食は自分でつくることが多かった(笑)。
はっきり言って食事はかなりマズかった。
英国の料理はマズいと噂で聞いていたので、別にムカつくことはなかった(苦笑)。
一番驚いたのが、Mammyがご飯を炊くとき…。
鍋に塩を入れてご飯を炊くのだ!(驚)。
もちろん炊き上がったご飯はとってもしょっぱい(泣)。
しかもそのご飯を食べるのは僕だけである。
つまりホストファミリーはご飯を食べないのだが、日本人の僕のためにご飯を炊いてくれるのであった。
正直、「ありがた迷惑」とはこのことである。。。

どうやって、この塩飯を消化しようか…?

そして僕が思いついたのが「ねこまんま」作戦♪
インスタント味噌汁を薄めに作って、そこに塩飯を投入…。

何で英国に来て「ねこまんま」ディナーばかりなんだよ!
…と思ったので、ホストファミリーが僕のために用意してくれた米は自分で炊くことにした。
そして、おかずも自分で作るように…(汗)。
Mammyも「JUNが料理した方が美味しいわね~」とか言っていたが、これは本当である(笑)。
ところが、イブラヒムは僕がつくった夕食(日本食)を食べようとしなかった。
宗教上の理由だそうである。

そんなある日、僕が学校から帰ってくるとイブラヒムが消えていた。
消えていたより、追い出されてしまったという方が正しい(笑)。
そしてイブラヒムはB&Bで生活することになった…。
ちなみにB&Bは島田洋七・島田洋八という意味ではなく、”bed and breakfast”の略である。

その後、イブラヒムの代わりにステイ先にやって来たのがパキスタン人の美しい女性♪
おぉー、これから一つ屋根の下である♪
そして、パキスタン人の美しい女性がやってきて2日後、僕は日本への帰路についた…。
今では彼女の名前すら思い出せない…。

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